◯六十四番(いなもと和仁君) おはようございます。
 先週末、青色にライトアップされた栄のオアシス21と名古屋テレビ塔が、未来の希望をイメージした虹色のライトアップに変わりました。名古屋のまちも少しずつにぎわいを取り戻しつつあります。県をまたぐ移動の自粛が全面解除され、社会が再び本格的に動き始めました。
 ここで、ほんの二か月余り前の世の中の動きを思い浮かべてください。四月の中旬、市場調査と激励のため、とある薬局を訪れた保健所の職員に、その薬局の経営者はこう言いました。店内を見てください。マスクはない、消毒液もガーゼも、体温計もない。そして最後に、店の奥に招き、レジを開けて、売上げも全くないと悲痛の声で現場の現状を訴えました。
 また、同時期、名古屋市内のドラッグストアの前には、七枚入りマスク一袋を買うためだけに、開店数時間前から多くの客が並ぶ姿も日常茶飯事となっておりました。私の店はもとより、名古屋市内の至るところで、現在、体温計、消毒液はまだまだ品薄となっておりますが、マスクは大量陳列され、値段も最高値の半額以下と投売り状態となっているところもあります。
 マスク不足時、早朝から並んで買えなかった客から、どうして買えないのか、どこかに隠しているのではと問い詰められ、罵声を浴びせられ、精神的苦痛を訴える店員も数多くいたとの報告もありました。感染リスクの高い苛酷な環境で働く人が、心ない言葉を浴びせられるのは悲しいことであります。
 様々な差別や偏見、感染リスクに伴うストレスなどを抱えながらも、新型コロナウイルス感染拡大防止に懸命に頑張ってみえる医療従事者の皆さんをはじめ、薬剤師、スーパーやドラッグストアなどの店員、宅配業者、公共交通機関など、日常生活を支えるのに欠かせないエッセンシャルワーカーと呼ばれる働き手の皆様に心より感謝と敬意を表します。
 さて、クラスター、オーバーシュート、ソーシャルディスタンス、テレワーク、リモート等、新型コロナウイルスに絡んだ片仮名語を見聞きしない日はありません。日常あふれる片仮名語に少しばかりの違和感を覚える方もお見えになると思います。そんな片仮名語に混じり、私は、巣籠もり、お籠もり、この言葉に心が安らぎます。
 五月四日に、新しい生活様式の実践例が示されました。三密の回避、マスクの着用、手洗いはもとより、近づかない、向き合わない、大声で話さないが是とされ、我々議員の活動も大きく制限されることになるかもしれません。
 また、サービス業、飲食業にとって大変厳しいものであります。先週、夜のまち対策のガイドラインが公表されましたが、接待を伴う飲食店をはじめ、夜のまちではどのような対策がなされているのか、座席数を半分にして採算は合うのか、フェースシールド、マスク着用の接待で客が満足するのか、名前をきちんと書いてもらえるのか、私は三か月もの巣籠もり生活を卒業して、できれば明日にでも現地調査のための巣立ちの決意をしたところであります。
 ウイズコロナとも言われるこれからの社会活動が自粛から自衛に変わっていく中で、産業、スポーツ、文化の面で、本県の取組について順次質問をしてまいります。
 まず初めに、スタートアップ等の海外連携促進についてお尋ねをいたします。
 新型コロナウイルス感染症の拡大は、本県経済にも大きな影響を及ぼしており、日銀名古屋支店が四月一日に発表した短期経済観測によると、この地域の景気判断指数はマイナス十一となり、全国のマイナス四に比べ、落ち込みが大きくなっております。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、需要面、供給面の両面からの制約により、幅広い産業が厳しい状況に直面している現在、事業継続に向けた支援に全力で取り組んでいかなければなりません。
 こうした中、県は、五月十一日に、愛知県新型コロナウイルス感染症経済対策を発表し、県民の生活や企業等の経済活動への影響を最小限に抑えるため、中小企業の資金繰りや休業協力金など、まずは事業者に止血を施し、事業継続に向けたきめ細やかな施策を展開しております。
 一方で、新型コロナウイルス感染症との闘いは中長期にわたることが想定され、人の移動や接触を抑制する傾向が続けば、事業活動がじり貧になっていくことが懸念されます。
 こうしたピンチをチャンスに変えていくためには、新型コロナウイルス感染拡大の完全な終息を待つのではなく、いわゆるウイズコロナの時代に、非接触でありながら生産性を高める仕組みや、新たなビジネスモデルによって付加価値を創造し、新しい生活様式で生じるニーズや課題を解決するスタートアップの存在が重要になってくるのではないでしょうか。
 先日、民間のスタートアップ支援機関が、百四十七社のスタートアップに行ったアンケートの結果を発表いたしました。この調査によれば、三五%のスタートアップが、新型コロナウイルスの影響でビジネスはよくなると回答しております。
 その内容を見てみると、特に、ITサービスやアプリ開発、提供、電子商取引、ウェブ教育などの分野において、売上げや新規取引の増加が期待されることがうかがわれます。
 一方で、課題も指摘されております。飲食や観光など対面サービスが基本となる分野においては、影響が長期に及ぶことや雇用の維持、資金の確保に苦労しているとの声もあります。
 こうした中、国において、二〇一八年から、成長戦略の重要な取組の一つとしてスタートアップ支援を推し進めており、その中でも先輩起業家、ベンチャーキャピタルや支援機関に関わる担当者が推薦する百三十九社のスタートアップを集中的に支援するJ─Startupプログラムが注目されております。
 このプログラムでは、ジェトロ(日本貿易振興機構)が世界十二か所に設置しているグローバル・アクセラレーション・ハブのネットワークを活用しながら、世界最大の家電見本市、CESといった、世界中から起業家、支援機関が集まる展示会への出展や海外現地情報などの提供、メンタリング、コミュニティーづくりを支援しております。
 現在、日本においては、約一万社のスタートアップが活動していると言われておりますが、グローバルに活躍するスタートアップは、まだ一部と指摘されております。
 民間調査会社の調査では、企業価値が十億ドルを超える、いわゆるユニコーンと呼ばれるスタートアップは、アメリカ百五十一社、中国八十二社、イギリス十六社に対し、日本は二社にとどまり、まだまだ今後の成長が期待される段階であります。
 このように、経済のグローバル化により、国境を越えて製品、サービスを展開するスタートアップやイノベーション企業がマーケットを創出し、大きな付加価値を生み出していく中で、スタートアップに限らず、本県のモノづくり企業にとっても、海外市場を視野に入れたイノベーションやビジネスモデルの構築、社内体制の整備、事業経営が重要となっております。
 先ほど述べましたJ─Startupプログラムにおいても、国内での土台がしっかりしていることに加え、経営トップが海外に視野を広げることが必要と分析されており、海外の市場の取り込みに向けて、海外の先進的なスタートアップやイノベーションも通じて、ビジネスを展開する企業との連携はますます重要となっております。
 こうした中、県では、現在、本県の産業競争力を維持、発展し、日本、世界をリードしていくために、スタートアップを起爆剤としたイノベーション誘発の土壌となるスタートアップ・エコシステムの形成、充実を目指して、二〇一八年十月にAichi─Startup戦略を策定するとともに、昨年九月からは、経済産業局にスタートアップ推進課を設置し、スタートアップ・エコシステムの形成、充実に向けたソフト、ハード両面からの施策を強力に推進してきております。
 さらに、県では、本年四月、名古屋市をはじめ、地域の支援機関や名古屋商工会議所、中部経済連合会、名古屋大学と連携し、あいち・なごやスタートアップ海外連携促進コンソーシアムを設立し、スタートアップの海外展開や海外スタートアップの県内企業との連携を促進していくこととしております。
 本県の産業競争力をさらに高め、新型コロナウイルス感染拡大の影響を乗り越えて、強靱な産業構造をつくり上げていくためには、県内の優れたスタートアップやモノづくり企業が、先進的なスタートアップ・エコシステムを有する世界のスタートアップと連携していく取組を力強くサポートしていくことが重要と考えております。
 今回設立したあいち・なごやスタートアップ海外連携促進コンソーシアムでは、今後、連携促進のためにどのように取り組んでいくのか、お尋ねをいたします。
 次に、新型コロナウイルスによるアジア競技大会の開催に向けた取組への影響についてお尋ねをいたします。
 新型コロナウイルス感染症は、スポーツ界にも様々な影響をもたらしております。全国各地で開催が予定されていた市民マラソンなどの市民参加型スポーツ大会や、高校野球をはじめとした学生スポーツ大会等の中止や延期が相次ぎました。
 さらに、プロ野球やJリーグをはじめとするプロスポーツにおいても、長い間、開催できない状況が続いておりました。
 新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛期間中には、本県を本拠地とする中日ドラゴンズや名古屋グランパスは、インターネットを通じてファンとの交流ができる企画や試合開始後に自宅での観戦を促す企画を行うなど、様々な取組によりスポーツ界の盛り上げを図っております。
 このような中、政府の緊急事態宣言解除を受け、開幕が延期されていたプロ野球が、やっと先週六月十九日に、セ・パ両リーグとも開幕を迎えることができました。
 当面の間は無観客試合となりますが、出場選手登録人数とベンチ入り人数の拡大や延長十回の打切りといった感染防止特例二〇二〇を設定するなど感染対策を講じながら、熱戦が繰り広げられております。
 我が中日ドラゴンズも、八年ぶりに苦手神宮球場で二勝一敗と勝ち越し、早くもAクラス入りが視野に入ってきております。優勝とは申しません。また、Jリーグについても、今週末の六月二十七日から、J2及びJ3、七月四日からはJ1が再開される予定です。
 感染症対策として、ビデオアシスタントレフェリーの実施見送りなどが検討され、また、他のスポーツと同様に、しばらくは無観客での試合となりますが、七月十日以降は、観客を入れての開催へ順次移行していくとのことであります。
 とはいえ、今後も、試合数の削減や無観客試合による大幅な収入の減少、観客を迎え入れるようになった後も、観客に対する体温の測定など、感染リスクを抑えるために必要なこれまでにないコストの発生、また、選手が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の対応など、様々な課題が残っております。
 近年では、東日本大震災の発生により、プロスポーツにおいても、長期間にわたって公式戦が中止となりましたが、今回、感染症がプロスポーツの運営において、大きなリスクとなることを痛感させられました。
 一方、市民参加の大会においても、三月八日に開催予定であった名古屋ウィメンズマラソン一般ランナーの部や、四月五日に開催を予定していた奥三河パワートレイル等が中止となりました。
 六月十四日に開催予定であったアイアンマン七〇・三セントレア知多半島ジャパンについては、十月十八日に開催すべく調整が進められております。
 中止となった名古屋ウィメンズマラソンの一般ランナーのために、三月八日から五月三十一日まで実施した名古屋ウィメンズオンラインマラソン二〇二〇には、多くの方が参加されたと聞いております。
 社会活動が大きく制限された中でも、三密を避けて何とか体を動かしたいと多くの方が思われている表れだと感じました。
 今後、市民参加型のスポーツ大会が徐々に再開され、県民の皆様に参加頂くことで、社会の活力が取り戻されることを大いに期待しております。
 さて、今回の新型コロナウイルス感染症に伴い、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が一年間延期されたことは、スポーツ界にとっても特に大きな影響を及ぼしております。
 大会の準備及び運営を行っている東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会では、二〇二一年七月二十三日から八月八日となった新たな会期に合わせて、新型コロナウイルス等の感染症防止の対応策を策定していくとともに、大会運営に係る計画の見直しや再調整を日々続けられております。
 競技を実施する上で、接触が避けられないものについてはどのように対応していくのか、また、観客が集まることによるリスクをどのように回避していくのか、クリアしなければならない課題が非常にたくさんあることは容易に想像でき、その一つ一つに対応していくことは本当に大変なことだと思います。
 そのオリンピック後の日本のスポーツ界の次なる大きな目標、オリンピックに次ぐ参加選手数を誇り、アジア最大のスポーツの祭典であるアジア競技大会が、ここ愛知、名古屋で二〇二六年に開催をされます。
 現在、昨年五月に設立された愛知・名古屋アジア競技大会組織委員会において、大会スローガンや大会エンブレムの決定、実施予定競技のうち二十八競技の競技会場の仮決定など、開催に向けた準備を着実に進められております。
 開催に向けた準備については、オリンピックと同様、やらなければならないことが本当に数多くあります。
 今後は、今回の新型コロナウイルスのような感染症だけでなく、自然災害など様々なリスクが発生することも念頭に準備を進めていく必要があると考えております。
 アジア競技大会の開催準備を進めていくに当たって、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとした様々なリスクに対し、どのように対応していくのかお尋ねをいたします。
 最後に、文化財の保存及び活用についてお尋ねをいたします。
 私が住んでおります名古屋市は、庄内川流域の低地を見下ろす台地上に数多く築かれた古墳があり、水田を豊かに潤す庄内川は、数千年前から物資を運ぶ水上交通のルートとして、名古屋市の歴史、文化の発展に大きく寄与しております。
 庄内川は、恵みをもたらすだけでなく、流域の低地部では度重なる水害を起こし、特に江戸時代には大水害が重なり、新川の開削など大規模な治水工事が行われ、近代には水運事業のために中川運河と新堀川が開削されました。
 名古屋港と笹島駅を結ぶ水運のために開削された中川運河は、松重と中川口に閘門を設け、水位が一定に維持される閘門式運河で、大正十五年から十二年の歳月をかけて完成しました。
 その松重閘門は、昭和六十一年には名古屋市指定文化財に、平成五年には都市景観重要建築物に指定され、現在は、周辺地域と併せて美しい景観が楽しめる公園としても活用されております。
 また、新堀川は、精進川と呼ばれた河川を運河として改修するために、明治四十三年に現在の川筋に付け替えられた川で、この工事で出た土砂により埋立て造成された鶴舞公園──地元ではつるみゃあ公園と呼ばれておりますけれども──現在、和洋折衷の都市公園として、四季折々の花々が咲き、特に桜の名所として知られております。
 平成二十一年には、明治の欧化思想の影響を受け、整形式の洋風庭園と回遊式の日本庭園を併せ持った名古屋市初の総合公園として、名勝の国登録文化財となっており、また、公園内の噴水塔や普選壇については市指定文化財に指定され、観光や市民の集いの場としてにぎわいを見せている公園であります。
 このように、地域の活性化や観光の振興を図る上において、地域の魅力ある文化財を活用することは非常に有益なことであります。
 現在、県が調査を進めている熱田公園内にある断夫山古墳は、私が小学校のとき熱田公園へ遠足に出かけたことをよく記憶しておりますが、その当時は樹木が生い茂った山林にしか見えず、随分いたずらをしたものでありますけれども、教えられなければ古墳とは分からない状態であり、この山林が東海地方でも最大級の前方後円墳で、国の史跡に指定されている遺跡であることを知りませんでした。その後、愛知県を代表する重要な文化遺産と知り、大変誇らしく感じております。今後の県の整備事業により、断夫山古墳が地域の観光資源として活用されることを大きく期待しているところであります。
 また、名古屋市が整備したしだみ古墳群ミュージアムは、平成三十一年四月に開館し、これまでに十五万人を超える来館者があるなど、大変なにぎわいを見せております。
 県が整備を進めているあいち朝日遺跡ミュージアムにおいて展示する朝日遺跡は、清須市と名古屋市西区にまたがる面積約八十万平方メートル、ナゴヤドームにすると約十七個分の大きさを持つ弥生時代の前期から中期、後期までにわたる大規模な環濠集落遺跡であり、最盛期には千人以上の人々が生活し、多くの人と物が行き交う東海地方最大の都市として栄えたとされております。
 また、この遺跡は強固な防御施設に守られた環濠集落であったことのほか、工房の跡も確認されており、赤い顔料と文様で描かれた赤彩土器をはじめ、多数の土器や石器、金属製品など、モノづくり愛知の原点とも言える高度な生産技術がうかがえる全国有数の出土品が多数発見されており、平成二十四年九月には、その出土品のうち特に学術的な価値の高い二千二十八点が国の重要文化財に指定されるなど、その価値が高く評価をされております。
 私は、昨年六月議会の教育・スポーツ委員会において、弥生時代から古墳時代への歴史の連続性の観点から、先ほど申し上げたしだみ古墳群ミュージアムとタイアップしていくべきだとの意見を申し上げたところであり、今後の取組に大いに期待するところであります。
 国においては、次世代に地域の人々の誇りやまちづくりを確実に継承することができるよう、平成三十年に文化財保護法等を改正し、景観、まちづくりや観光などと一体的な施策推進の必要性から、文化財保護の事務について、地方公共団体の長が担当できるようになりました。
 改正文化財保護法においては、地域における文化財の総合的な保存、活用を図るため、都道府県が文化財の保存及び活用に関する総合的な施策の大綱を定めることができるとされており、現在、文化財の保存及び活用に関する総合的な施策の大綱、愛知県文化財保存活用大綱を策定中であると聞いております。
 そこで、文化財の保存と活用を図るため、今後、県としてどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねをいたします。
 これで私の壇上からの質問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)


◯経済産業局長(伊藤浩行君) あいち・なごやスタートアップ海外連携促進コンソーシアムの今後の取組についてお答えいたします。
 このコンソーシアムでは、行政、経済界、大学連携の下、ジェトロの世界的なネットワークを活用しながら、県内スタートアップの海外展開や海外のスタートアップと県内のモノづくり企業との協業の促進に取り組んでまいります。
 具体的には、先月、海外連携相談窓口をジェトロ名古屋内に開設するとともに、明日二十三日には、支援プログラムのキックオフとして、海外展開戦略に関するウェブセミナーを開催することとしております。
 今後、支援するスタートアップ、県内企業二十社程度を選定し、事業戦略の構築支援を行った上で、北米、欧州、中国、インドなどのスタートアップ集積地域において、現地スタートアップとのビジネスマッチングや関連展示会への出展を支援してまいります。
 さらに、世界各地から連携可能性のあるスタートアップ二十社程度を本県に招聘し、県内モノづくり企業との商談、交流の機会を設け、スタートアップの持つ斬新なアイデア、技術とモノづくり企業の融合によるイノベーション創出を支援していくこととしております。
 なお、実施に当たっては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人の移動が困難な場合は、ウェブを活用した個別メンタリングや海外スタートアップとのマッチング、バーチャル展示会への出展を併用するなど、状況に応じた効果的な支援に努めることとしております。
 こうした取組を通じ、国際的な企業連携による新たなビジネス創出を後押しし、本県産業の持続的な発展につなげてまいります。


◯スポーツ局長(飯田靖君) アジア競技大会におけるリスク対応についてお答えをいたします。
 四十五の国と地域から多くの選手や関係者が参加するアジア競技大会では、感染症はもとより、様々なリスクを想定しておく必要がございます。
 そのため、二〇一八年に締結した開催都市契約の中では、安全かつ平穏な大会を開催するため、開催都市及び組織委員会に対し、適切な警備の実施や医療サービスの提供などが求められております。
 また、戦争やテロ行為、自然災害、感染症などの不可抗力の事態が発生した場合は、大会の延期または中止をすることができると定められております。
 あわせて、このような競技大会に関連する全てのリスクを担保する保険契約に加入するものとなっております。
 今回の新型コロナウイルス感染症により延期となった東京オリンピック・パラリンピックでは、六月十日に、安全・安心な環境の提供、延期に伴う費用最小化、簡素な大会といった三つの基本原則や大会延期に伴う開催までのロードマップを示すなど、新型コロナウイルス感染症を乗り越えた新しい時代に即した大会の開催に向けた取組を着実に進めております。
 開催まであと六年となりましたアジア競技大会におきましても、今後、競技や警備など個々の分野における具体的な検討を行っていく中で、感染症や地震、テロなど様々なケースを想定し、東京オリンピック・パラリンピックの取組も参考にしながら、リスクに対応できる大会運営計画をつくり、その計画に沿って準備を進めてまいりたいと考えております。


◯県民文化局長(水野直樹君) 文化財の保存及び活用について、今後どのように取り組んでいくのか、お答えします。
 本県では、文化財の計画的な保存を進めるとともに、文化芸術の振興や景観、まちづくりなどの推進と一体的に活用していくため、本年度、文化財保護業務を教育委員会から県民文化局へ移管いたしました。
 業務の推進に当たりましては、新たに文化財保護法に基づく愛知県文化財保存活用大綱を策定し、基本的な方針や県として講ずる措置及び取組、さらに、県内市町村への支援及び連携などを定めてまいりたいと考えております。
 この大綱による県としての取組といたしまして、議員お示しの断夫山古墳については、今年度から名古屋市と共同で発掘調査を行うこととしており、古墳の歴史的価値を明らかにするとともに、今後の保存、整備、公開活用に向けて取り組んでまいります。
 また、本年十一月二十二日には、あいち朝日遺跡ミュージアムを開館いたします。朝日遺跡の文化遺産としての魅力を広く発信し、にぎわいのある施設とするため、重要文化財を様々なテーマで企画展示するほか、映像や模型を使った分かりやすい解説や親子で一緒に楽しめる土器や勾玉作り体験を実施してまいります。
 さらに、ミュージアムを所管する県と市町村との連携の一環として、清州城を所管する地元清須市と共通入場券などについての連携、協議を進めるとともに、しだみ古墳群ミュージアムを管理運営している名古屋市とも協定を締結しており、イベントや広報を連携して実施していきたいと考えております。
 県といたしましては、今年度策定いたします愛知県文化財保存活用大綱に基づき、着実な文化財の保存、継承を進めるとともに、県内市町村の景観、まちづくりや観光振興とも連携、協力し、文化財の保存と活用に積極的に努めてまいります。


◯知事(大村秀章君) いなもと和仁議員の質問のうち、アジア競技大会におけるリスク対応について、私からもお答えをいたします。
 国際スポーツ大会は、これまでも様々な困難に直面してきた歴史がございます。オリンピックでは、不幸にも、第一次及び第二次世界大戦により、一九一六年のベルリン大会、一九四〇年東京大会など五つの大会が開催されませんでした。
 しかし、第二次世界大戦の影響で中止となった一九四四年のロンドン大会は、その四年後の一九四八年に、空襲の傷痕が残る中ではありますが、開催に至ることができました。
 近年では、前回の二〇一六年リオ大会がジカウイルス感染症の流行により開催を危ぶむ声がありましたが、開催国が国を挙げて感染症の広がりを抑え込むことで、無事に開催することができました。
 また、昨年のラグビーワールドカップでは、十月十二日の夜から十三日未明に日本に上陸をいたしました大型の台風十九号の影響によりまして、残念ながら十月十二日に予定されておりました豊田スタジアムでのニュージーランド対イタリア戦など三試合が中止になったことは記憶に新しいところであります。
 その際は、事前に準備されておりました緊急時対応計画に基づき、観客の安全を最優先といたしまして、台風の進路に当たる豊田スタジアムなどでの三試合を当日朝までに中止する一方で、十三日の夜には、横浜国際総合競技場の試合準備を整え、満員のファンを迎えることができました。
 この試合が、日本が史上初のベストエイト進出を決めた日本対スコットランド戦でありまして、我が国のリスク管理、危機対応能力が高く評価された試合でもありました。また、興行中止保険により、中止の試合の損失をおおむね補うことができたとも聞いております。
 二〇二六年のアジア競技大会につきましても、こうした過去の国際スポーツ大会の事例を参考にしながら、リスクを適切に管理し、柔軟に対応していくことで、選手や観戦客の皆様が安心して参加頂ける大会をつくり上げてまいります。