平成28年9月29日

◯五十一番(いなもと和仁君) 通告に従いまして、順次質問をいたします。
 先ほどより防災についての質問がございましたが、私も防災に対する質問、まず第一問目、災害薬事コーディネーターについてお尋ねをいたします。
 東日本大震災から五年六カ月がたち、そして、熊本地震から間もなく六カ月になろうとしております。
 皆様、御承知のとおり、東日本大震災では死者、行方不明者約二万人、建物全壊は約十二万棟の被害でありました。そして、今後、必ず発生するであろう南海トラフ地震での愛知県の被害は、理論上最大想定モデルによりますと、死者二万九千人、建物の全壊、焼失は約三十八万棟と想定されております。災害対策はまさに待ったなしの課題であります。
 改めて言うまでもなく、災害発生時においては、医療体制の確保は大変重要な課題であり、救護所などで必要とされる医薬品等の供給は、その基盤となるものでありますが、東日本大震災では、被災地における医薬品等のニーズの把握も十分に行われず、結果として、それを必要とする現場に届けることができない状況もあったと聞いております。同じように、せっかくの県外からの支援医薬品等が活用されないまま放置されるといったこともあったようであります。
 そして、救護所や医薬品等の集積所においては、医薬品の専門家である薬剤師の有用性が示されつつも、その配置や活用が課題となりました。同じように、熊本地震後の対応においても改善すべき点が認められました。
 このように、これまでの事例では、災害時における医薬品の供給等について、いろいろな課題が明らかになりましたが、これらを解決するために、一部の都県では災害薬事コーディネーターを養成、設置しております。
 災害薬事コーディネーターの役割については、全国的に標準化されてはいませんが、静岡県の例によりますと、災害時に、県本部や地域で支援を効率的かつ効果的に受け入れるための受援体制の整備や、薬剤師及び医薬品に関するニーズの把握とマッチングを行う薬剤師と定義をされております。
 災害薬事コーディネーターは、東京都のように区市町村が設置するものを含め、全国八都県で設置されており、特に南海トラフ地震の被害想定の大きい静岡県では百三十一名、高知県では八十五名が既に設置されております。
 愛知県における災害時に使用する医薬品の確保等については、過去に本会議において質問があり、愛知県医薬品卸協同組合や中部衛生材料協同組合に委託して、けがの治療用など緊急用の医薬品等を必要量確保していることや、緊急用以外の医薬品等についても、各関係団体と優先供給の協定を締結していること、災害発生時に医療救護所を設置する市町村からの要請を受けて、県の指示により、それらの医薬品等を必要とする施設に供給する体制を整えているとの答弁がありました。
 本県では、災害時において必要となる医薬品等の確保や供給について、一定の体制が確保されているとは思いますが、東日本大震災や熊本地震の状況から、被災の混乱の中、膨大な種類のある医薬品等の供給要請を的確に整理、調整し、県が医薬品卸業者に対して行う供給指示につなげて、医薬品等を本当に必要とする施設等に円滑に供給していくためには、薬の専門的知識を有する薬剤師である、災害薬事コーディネーターを中心とした、さらなる体制の充実が必要であると考えております。
 愛知県では、災害薬事コーディネーターの養成、設置について、どのような考えを持ち、そして、今後どのようにしていくのか、お尋ねをいたします。
 次に、高年齢者雇用促進対策についてお尋ねをいたします。
 どこか働くところない、いい仕事があったら紹介して。議場の皆さんも、支援者や後援会の人からこんな相談が数多く寄せられていると思います。高齢な方の就職はなかなか難しく、私もシルバー人材センター等、いろいろ働き場を紹介しても、働きたい人と事業者のニーズが合わず、特に高齢な女性に適した求人はほとんどありません。
 先般、私の所属する人づくり・福祉対策特別委員会で、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの名誉総長であられる大島先生をお招きいたしまして、「長生きを喜べるまちへ『愛知への提言』」という演題で講演がありました。講演の中で、大島先生は、日本は二〇一五年において、高齢化率二六・七%、平均寿命は女性が八十七・〇五歳で、世界で第二位、男性が八十・七九歳で、第四位、高齢化のスピード率は、国際比較においても、所要年数が二十四年と世界で最も早いとのことでありました。
 また、日本の今後として、平成十六年に小泉総理が、長生きを喜べる社会の構築、平成二十七年に安倍総理が、一億総活躍社会の実現を掲げております。
 長生きを喜べる社会とは、元気な高齢者から元気を奪わない社会、支援が必要なときに、気兼ねなく支援を受けられる社会、全世代が共存、共栄できる社会であり、その条件として、社会の中に高齢者のいる場所がある、その人の能力を生かす機会や場がある、虚弱者を受け入れる場や支援があると言われております。
 安倍首相が掲げた一億総活躍社会の実現に向けては、横断的課題である働き方改革の方向の一つとして、高齢者の就労促進を掲げております。さらに、ニッポン一億総活躍プランでは、生涯現役社会を実現するため、雇用継続の延長や定年引き上げに向けた環境を整えるとともに、働きたいと願う高齢者の希望をかなえるための就職支援を充実する必要があり、人口が減少する中で我が国の成長力を確保していくためにも、高齢者の就業率を高めていくことが重要であると述べられております。
 我が国の高齢化は、世界に類を見ない速度で進み、二〇三〇年には六十五歳以上の高齢者が総人口の三人に一人となることが見込まれております。一方で、十五歳から六十四歳の人口、いわゆる生産年齢人口は減少し、二〇三〇年には総人口の六〇%、二〇六〇年には総人口の五〇・九%にまで減少する見込みとされております。
 こうした状況の中、我が国が活力を維持し、持続的な成長を達成するためには、高年齢者が意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働くことのできる生涯現役社会の構築を目指す必要があり、そのための雇用環境の整備が求められております。
 多様な経験、能力、多彩な経歴、人脈、そして自由な発想を持ち、時間のある高年齢者の方々は最大の財産であり、新しい産業、文化、社会の創生に欠かすことのできない存在であります。
 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、企業に対して、六十五歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけており、現在では、ほぼ一〇〇%の企業が継続雇用制度の導入等の措置を導入済みでありますが、今後は、特に六十五歳以降の高年齢者の雇用・就業機会の確保が重要であります。
 また、こうした高年齢者の多くは、活動の場を自身の居住地域などに移しているために、これらの層を含む高年齢者が、地域で働くことのできる環境整備を行っていくことが重要であると考えております。
 こうした状況の中、高年齢者雇用に係る支援について、県はどのように認識し、そして、今後どのように取り組んでいかれるおつもりなのか、お尋ねをいたします。
 最後に、男性養護教諭の配置について、本県の考えをお尋ねいたします。
 さて、皆さんが今まで出会った保健室の先生はどのような方でしたでしょうか。
 けがや病気のとき、優しく接してくれる先生、勉強や授業が嫌になり、頭が痛い、おなかが痛いと言って保健室に行ったとき、優しく話を聞いてくれる先生、そして、養護教諭イコール女性というイメージではなかったでしょうか。
 私は、学生時代はもちろん、二十七年間、地元の小学校、中学校で学校薬剤師をしておりますが、今まで出会った養護教諭は全て女性でありました。
 あるとき、知人から「男性養護教諭がいる学校」というタイトルの本をもらい、読んでみると大変興味が湧いてまいりました。
 この本につきましては、先般、新聞でも紹介がされておりましたが、私は、早速、この著者の一人である市川先生に連絡をとり、直接お話を伺いました。
 市川先生は二〇一〇年、名古屋市教育委員会初の男性養護教諭として正規に採用され、現在は名古屋市立天白養護学校に勤務しておられます。また、先生は以前、私の住む中川区の名古屋市立西養護学校に勤務され、私の知人である薬剤師も、この本の中で学校薬剤師での活動が紹介をされております。
 この先生との会話をもとに、三つの質問をさせていただきます。
 先生は、どうして養護教諭を目指されたのですかとお尋ねをしたところ、高校三年生に進級して間もないころ、保健室で悩んでいる友人の相談に真摯に向き合う養護教諭の姿を見て、こんなに格好いい仕事はない、この場で救われている子供がいる、ここで救っている大人がいる、自分はこんな大人になりたいと強く感じたそうであります。
 次に、男性養護教諭ならではのメリット、デメリットをお尋ねしましたところ、メリットとしては、男性児童生徒に対するフォローがしやすいという点であります。特に、思春期になり、人間関係、身体的特徴や性の悩み、いじめ等があったとき、特に相談しやすいということであります。そして、デメリットとしては、一番は女性に対する指導の難しさであります。健康診断や着がえ、直接体にさわってのけがの治療には、特に神経を使うとのことでありました。しかし、この問題については、女性教諭を必ず同行させる、一緒にいるという点で、問題が解決できるとのことでありました。
 そして、最後に、今後どのような養護教諭を目指しますかとお尋ねをしたところ、僕は、何でも相談できる兄貴のような養護教諭でいたいと胸を張って言われました。
 そもそも養護教諭とは、学校においてどのような存在なのでしょうか。
 学校の児童全体の健康にかかわりを持つ存在であり、けが、病気の手当て、保健室の運営、心や体についての相談、学校保健活動の計画と参画などが主な仕事内容であります。
 そして、最近では、保健室は心の居場所になってきております。養護教諭は、悩みや訴えを聞いたり、身体的不調の背景に目を向けることを通じて、子供の発するいろいろなサインを早くから気づくことができる存在であります。児童生徒の健康管理、けがの処置、体調不良時の経過観察などで用いられてきた保健室が、教室へ行くことのできない児童生徒たちの居場所となっており、その中心にいるのが養護教諭であります。
 養護教諭の歴史を見てみますと、就学率が高くなる過程でトラコーマが流行し、一九〇五年、岐阜県で二人の学校看護婦が期限つきで採用され、洗眼、点眼を徹底した結果、罹病率が減少したとされております。一九一二年には、大阪府堺市で五名の学校看護婦が市内全校へ巡回分担され、全国各地で徐々に学校看護婦が増加したそうであります。
 これも、子供たちが学校に多く通うようになって、その健康を考えての施策であったと思います。学校看護婦がその前史であれば、養護教諭に男性がほとんどいないのも当然であります。
 では、他の国に養護教諭はいるのでしょうか。
 アメリカでは、看護師資格を持ったスクールナースがいるそうであります。そして、その人は教育部門ではなく健康部門のみにかかわっております。
 現在、全国に約四万人いる養護教諭のうち、男性は〇・二%に満たない六十五人であります。将来先生を目指している男子学生の中にも、養護教諭になりたいと思っている人も少なからずいると思います。しかし、残念なことに採用がほとんどないため、その夢を諦めていく学生も多くいることでしょう。
 小学校は八百五十一人以上、中高校では八百一人以上の児童生徒がいれば複数配置が決まっております。共学の学校では、児童生徒の半分は男子、半分は女子の割合であり、男子、女子、どちらの気持ちも十分対応できるような養護教諭の配置が必要であるかと思います。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 愛知県公立学校教員採用選考試験の男性養護教諭の志願状況と採用状況はどのようになっているのでしょうか。男性養護教諭を採用した場合に、配置等の見通しは持っておられるのでしょうか。男性養護教諭を配置することについて、どのようにお考えなのでしょうか。
 これから養護教諭を目指す男子学生に、夢と希望を持たす、そんな答弁を期待いたしまして、壇上よりの質問といたします。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯健康福祉部保健医療局長(松本一年君) 災害薬事コーディネーターについてお答えいたします。
 大規模災害が発生した際、本県では、災害対策本部内に災害医療調整本部を設置し、災害医療に関して経験豊富な医師である災害医療コーディネーターの統括のもと、医療機関の被災状況や避難所等の医療ニーズの把握、分析を行い、医療チームの派遣や患者搬送等、全県的な災害医療の調整を行うこととしております。
 災害時の医薬品等の供給につきましても、災害医療調整本部で調整することになりますが、被災地域からの医薬品に関するさまざまな要望の整理や、医療救護活動に従事する薬剤師の配置の調整など、全てを災害医療コーディネーターが行うことは困難でございます。
 そこで、これらの業務を担い、災害医療コーディネーターのサポートをする専門家として、災害薬事コーディネーターを災害医療調整本部に配置する必要があると考えております。
 医薬品に関する専門的知識を有し、災害派遣医療チーム、いわゆるDMATの一員であるなど、災害医療に精通した薬剤師の中から複数名の災害薬事コーディネーターを今年度選任し、災害時の医薬品供給体制に万全を期してまいります。

◯産業労働部労政局長(間所陽一郎君) 高年齢者の雇用促進に係る県の認識と今後の取り組みについてのお尋ねであります。
 少子・高齢化が進展する中、社会の活力を維持し、持続的な成長を実現するとともに、高年齢者が豊かな生活を送られるようにするためには、意欲と能力のある方が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現が重要であり、今後は、とりわけ六十五歳以降の高年齢者の雇用・就業機会の確保が重要な課題と認識しております。
 県の取り組みとしましては、これまでも企業のトップの方等に高年齢者雇用に対する啓発を図ることを目的としたセミナーや、高年齢者が再就職に必要な知識を得られるセミナーを開催し、円滑な再就職を支援しているところであります。
 さらに、今年度の新たな取り組みとして、本県の実情に応じた高年齢者の多様な就業機会を確保するため、労使関係団体等から構成する愛知県高年齢者就業促進協議会を設立するとともに、この協議会での検討、調整を経て、厚生労働省に提案した事業構想が生涯現役促進地域連携事業として採択されたところであります。
 この事業の中では、高年齢者の求職活動をサポートする個別相談窓口の設置、求職者のスキルアップを目的としたセミナーの開催、企業とのマッチング機会を提供する職場見学会や企業説明会等の開催を予定しております。
 今後は、ハローワークと連携を図りつつ、こうした事業を着実に実施し、高年齢者の雇用・就業機会の確保に向けた取り組みを一層進めてまいりたいと考えております。

◯教育長(平松直巳君) 男性の養護教諭の配置についてのお尋ねのうち、まず、男性の養護教諭への志願と採用の状況についてお答えをいたします。
 本県の養護教諭の採用選考試験におきましては、従来から男女の区別なく募集をしておりますが、男性の志願状況を過去三年間の受験者数で申し上げますと、平成二十七年度が二名、二十六年度はゼロ、二十五年度は三名となっております。また、この三年間を含めまして、これまで男性受験者で合格、採用された方はおりません。なお、平成二十七年度の養護教諭の採用選考試験の受験者数は、全体で四百八十七名、合格者数は四十二名で、倍率は十一・六倍となっております。
 次に、養護教諭に男性を採用した場合の配置の見通しについてでございます。
 今後、男性を養護教諭として採用した場合には、議員から御指摘がありました、男子の児童生徒に対するフォローがしやすいというメリットを生かすとともに、女子の児童生徒に対しては女性の養護教諭が対応をすることができるよう、大規模校など養護教諭を複数配置している学校への配置を検討したいと考えております。
 最後に、男性養護教諭を配置することについてでございます。
 子供たちを取り巻く社会環境の変化に伴い、児童生徒の心身の健康課題が多様化、深刻化しており、健康に関する教育や相談等を担う養護教諭の役割は一段と重要性を増しております。また、養護教諭には、学校保健に関する委員会活動、環境検査等、日々の児童生徒の生活にかかわる多様な職務もございます。
 養護教諭の採用に当たりましては、このような職務、職責にふさわしい優秀な人材を男女を問わず選考してまいりたいと考えております。